なぜ有効活用が必要か
エゾシカによる被害は農林業で50億円との報告もありますが、そのほとんどが農業被害です。林業への影響は時間とともに把握されることや、どの木を食したのかの全体像を把握することが困難なため被害額がつかみ切れていません。さらに交通事故や鉄道事故による損害を含めると計算はされていませんが、さらに数倍の被害額となっているものと推測されます。
加えて、個体数調整に要する費用を含めるとエゾシカによる被害は、経済的にも非常に大きな損失となります。
有効活用は、単に処分に困っているからという理由だけでなく、損失だけのエゾシカから、少しでも利益をもたらすための工夫という観点から必要と考えています。
有効活用を進めるための課題
現在、主として食肉等の利用されているエゾシカは、全捕獲数の約1割程度(約1万3千頭)にとどまっています。エゾシカを商品として活用するためには、衛生管理の観点から保健所への登録が必要となり、この処理施設は全道で82施設(平成21年度末時点)あります。これらの施設ではハンターから8,000円~1万円/頭で買い取っており、有害駆除の報奨金よりも高く引き取ってもらえるためハンターからもこうした施設の整備の要望が多くあがっています。
なぜ、商用に利用されているエゾシカは少ないのか。需要が少ないというのがこれまで考えられていたことですが、実は、最近の傾向をみると少し変化してきているように感じています。
最近ではテレビなどでエゾシカ料理が取り上げられたりしており、人々の関心も以前よりは高くなってきていると思います。また、ペットフードも動物病院で扱っている例もみられてきており、その価値も見直されてきています。
ところが、食肉を処理、供給している施設やペットフードを製造している事業所に話を聞くと、原料が足りないという状況が発生してきているといのです。
例えば、肉や加工品などをスーパーに置かれている例もみられてきていますし、学校給食などでの利用例もみられてきています。しかし、こうした利用に供するためには、安定供給できなくてはいけません。それが、原料が足りないから安定供給ができないという状況が発生してきています。
一方で大量に捨てられ、一方で資源が足りないという、矛盾した状況が発生してきているのです。
もちろん、こうした矛盾が発生している理由もちゃんとありますが、長くなりますので、次回以降で考えていきたいと思います。
エゾシカを有効活用していくためには、さらに多くの課題があります。野生動物であることによる衛生面での消費者の不安、今のような衛生管理が行われる以前に食したエゾシカ肉に対する悪いイメージ、衛生管理にかかる法的要因、さらには皮利用のための鞣し加工の課題などがその一端です。
こうした様々な課題のほか、例えば、道内各地の話を聞いてみるとどうも地域や食している餌によって肉の味が違うといった話や、ハンターならではの料理方法の紹介など、真面目な話から、噂話も含め、楽しい交流の場にしていきたいと思います。
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